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2017年12月31日 (日)

「大阪市子どもの生活に関する実態調査報告書」を重視した子どもの貧困対策の実現を求める陳情書

【陳情趣旨】

 昨年の夏、大阪市は小学校5年、中学校2年、5歳児のいる約5万6000世帯を対象とした大規模な「子どもの貧困調査」を実施し、76.8%の高い回答率を得ています。そこでは、年収200万円以下の世帯は、小5・中2世帯で10.3%、5歳児以下世帯8.3%にのぼり、全国平均の約1.5倍となっていることが分かりました。そして、家庭の貧困が子どもの生活に直結している実態も明らかになりました。
 今年の春には、大阪府立大学山野研究室が大阪市から委託を受けて調査結果の分析を行い、「大阪市子どもの生活に関する実態調査報告書」(以下、「報告書」)を公表しました。「報告書」は、大阪市に対して子どもの貧困の深刻さを受け止め、以下のような重要な指摘を行っています。 
  ①生活保護制度や就学援助制度、児童扶養手当、児童手当が必要な対象世帯に届いていない ことが明らかとなりました。「報告書」は、これらの制度の捕捉率を上げるための施策を求 めました。
  ②10代で出産した親やひとり親世帯ほど生活実態が厳しいことも明らかになりました。「報 告書」は、これらの世帯を「優先して支援すべきグループ」として、若年出産者に対する経 済的支援、保育所への優先的入所支援、就労支援などを一体的に実施する必要性を指摘し ました。また、母子世帯の非正規雇用の割合が高いことから、ひとり親世帯の雇用や正規 雇用化に向けた取り組みの検討も指摘しています。
  ③「報告書」は、貧困な世帯の医療費負担を軽減するため、子ども医療費助成制度の拡充や国 民健康保険料及び利用者負担の減免の拡充を求めました。児童扶養手当など現金給付の水 準の引き上げを国に働きかけることも求めました。
  ④「報告書」は、世帯の貧困によって保護者の不安やイライラが募り、それが子どもたちの心 理的・精神的症状につながっていることを明らかにしました。これらの実態に対して、「報 告書」は「セーフティネットとして誰もが通う学校」での支援の展開を指摘し、「チーム学 校の機能」を強めていくことを提言しました。その際、「キーになる人材」としてスクールソ ーシャルワーカーの存在の重要性も指摘しました。
  ⑤今後の課題として「複数年かけて初年度同様様々な角度から全体像をつかむ、次年度更に 分析を進めて構造を明らかにする方法」や「当事者の声を直接聴く取り組み」など、継続 した実態調査を提起しています。

 大阪市は、「報告書」が出てから「こどもの貧困対策推進本部会議」を二度開催していますが、「報告書」が求めた具体的な施策に応えるものとはなっていません。生活保護など社会保障制度を必要としている人に「確実に届ける」ための施策やひとり親世帯への支援策については、「地域や学校で支援を要する世帯を発見し、適切な支援につなぐ仕組みが機能するように取り組む」(「大阪市子どもの生活に関する実態調査報告書を踏まえた課題と対応の方向性について」(2017年5月12日))と指摘するのみで、そのために何が必要なのか具体策を示していません。若年出産の世帯の生活の困難さについては、学校での「性に関する正しい知識の普及」「乳児に触れ合う機会や母親の体験談を聞く機会の拡充」(同上)の強調、貧困な世帯の子どもたちの心身の困難さについては、学校での健康教育や「規範意識・社会性の育成など家庭教育」(同上)の重要性を強調しています。必要な経済的な支援や親の正職化を進める就労支援、社会保障の充実等を抜きにしたこれらの方向性は、貧困な世帯の自己責任論を増幅させる危険性があります。大阪市教委にいたっては、NPOなどの実施する「こどもの居場所づくり」の支援として、教員採用試験を受ける学生に「こども食堂」等でのボランティア経験を「加点」するとしただけでした。
 8月7日、私たちは、大阪市に対して「大阪市子どもの生活に関する実態調査報告書」を踏まえた質問書を提出しました。「報告書」がこれまでの施策の不十分さを指摘しているにもかかわらず、大阪市の回答は多くの項目で「検討中」としたり、従来の施策の継続を説明したりするもので、新たな取り組みを示すものとはなっていませんでした。

 大阪府の子どもの貧困は、全国で2番目の深刻さです。大阪市は、大阪府内でも最も厳しい状況にあります。大阪市の「子どもの貧困調査」は、憲法に保障された子どもの「教育への権利」や生存権そのものにかかわる深刻さを持っていることを示しました。まさに大阪市の子どもの貧困対策は待ったなしの状態です。しかし、「報告書」が重要な指摘をしているにもかかわらず、大阪市はそれを重視した対策を検討しているとは思えません。市民が声を上げ、行政に具体的な施策を求めていくことが極めて重要になっています。私たちは、「報告書」が指摘した課題の中でも、緊急性の高い以下の5項目について早急に対策をとることを求めます。

【陳情項目】

1.困窮度の高い世帯の生活保護制度、就学援助制度、児童手当の捕捉率を上げる具体的な施策をとってください。

2.ひとり親世帯のための児童扶養手当の捕捉率を高める施策をとってください。養育費の受給率を高める施策をとってください。

3.若年出産世帯のニーズを把握し、きめ細かな経済的支援と就労支援を具体化してください。保育所への優先的入所を保障する施策を早急に具体化してください。

4.「チーム学校」の「キーになる人材」であるスクールソーシャルワーカーを全中学校区に常勤配置してください。そのために、スクールソーシャルワーカーの養成を支援し、待遇の改善を進めてください。

5.大阪市の子どもの貧困の構造を明らかにするために、複数年かけて実態調査を行ってください。その際、当事者の声を直接聴く取り組みも進めてください。

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